~サヴォワの銘醸、ジョンジュー~

ラ・ヴィネ入でも人気の高いサヴォワ地区。最初に訪れたのは、実力派の蔵元が集中している銘醸地「ジョンジュー」です。
圧倒的な傾斜の畑と標高の高さ、湖とローヌ川が近くを流れる風光明媚な場所です。

海苔の風味がする独自の土壌 ~特別地区モントゥー~

最初に訪問した蔵元で対応してくれたのは、2008年から本格的にドメーヌに参加している娘さんのエマニュエルさん。以前仙台に4ヶ月ほど滞在していたとの事で、日本の言葉をいろいろと知っていました。
ここのモントゥーが熟成してくると「海苔」の香りがしてくるのが特徴的なので、それを言ってみたら、海苔は私の好きな日本食の一つです!と話が盛り上がりました。
モントゥーはマレステルに比べると石灰質が強く、太古の海藻類由来の石灰が多く存在する特別地区との事。因みに、現地の人は“マレテル”と発音してました。
白はコンクリートタンク、ステンレスタンク。赤はポリエステルの小タンクで仕込みます。コンクリートタンクはモントゥーとマレステルなどの上級クラスを仕込み、その他はステンレスタンクを使用しています。コンクリートタンクはひび割れがあったりしているので近いうちに新しいものに変えるとか。

深い霧が雲海のように見えたので、霧の発生による影響を聞いてみましたが、秋の収穫後によく発生するので問題ないとの事。この地区では貴腐はあまりよくないとされているみたいでした。

2021年は遅霜の影響で80%減。サヴォワでは21年と22年に遅霜の被害が出ているとの事でしたが、区画により状況が違うのでかなり細かく微気候が存在しているのを実感しました。

発酵直後のテイスティング ~それぞれの個性がはっきりとわかる新酒~

南フランスよりは収穫が遅かったサヴォワでも、ちょうど発酵が終わったタイミングという事で、タンクから出来立てピチピチのワインをテイスティングする機会に恵まれました。
想像以上に味わいの個性がはっきりと感じられたのですが、ルーセットは熟成により花開くので、この段階では特徴的な風味は感じられないものが多くありました。

残っていた葡萄も食べる事ができました!

これは南部地区にある、シニャンの急斜面に栽培されている固有品種「モンドゥーズ」です!
小粒で黒々としていて、糖度が高く、果皮も非常に厚い。その後は房ごと残っていた「ジャケール」(こちらも固有品種)も食べることができました。
サヴォワの急斜面は日差しが非常に強いのですが、風は冷たく、昼夜の寒暖差が上質な葡萄を育むんでいるのを実感しました。

2022年は僅かな収穫量

この蔵元では今年の6月に霜の害があり80%減。もともと8haしか所有していないので、仕込んだのは600リットルのポリエチレン製のエッグタンク2個と小型のステンレスタンク1個のみという少なさ。
しかし収穫された葡萄は凝縮されていて小粒な為、ポテンシャルの高いワインができると言ってました。

車で急斜面を上がりテロワールの個性を実感

蔵元の背後にそびえるシニャンの岩山のスケール感に圧倒されながら急斜面の畑を案内してもらいました。あまりの急斜面と高さ、そして車がギリギリで通れる道はもちろんガードレールのようなものはなく一歩踏み外せば命はないくらいで緊張感がありました。奥の方に少し顔をだしている雪をまとった山はあのモンブランでした!

完熟したルーセットの色合いから名を付けたワイン

今回はラ・ヴィネ未入荷のワインの発見も多数ありましたが、その中でも特に印象に残っていたのが、ジョンジュー村の生産者が造っていた「ラ・ルース」という名が付けられたキュヴェ。

この言葉は完熟して淡い茶色に僅かに紫が混じった色合いを指すフランス語。
石灰質の強い僅か0.5haの区画の完熟葡萄のみで仕込んだ特別品。試飲した2019年は洗練された綺麗なスタイルに濃密なアプリコットやパインアップルの風味と、余韻に海苔のようなミネラル風味が広がる秀逸な仕上がりでした。

恵比寿ワインマートスタッフ