フランスワイン買い付け訪問記 No.2 ブルゴーニュの知る人ぞ知る赤の銘醸地イランシー
こんにちは、ラ・ヴィネ虎ノ門店の河原です。今回から本格的な買い付けの旅行記となります!
宿泊先のオセールを早朝に出発し、おおよそ20分ほどでまず最初に訪れたのが、ブルゴーニュ地方でも北部に位置する、知る人ぞ知る赤の銘醸地イランシーです。
イランシーはブルゴーニュでも赤のみ認められるAOCで、1999年に認可された比較的新しいアペラシオンですが、古代ローマ人が開拓したという文献も残っている程、その歴史は非常に長いワイン産地です。
この日は生憎の雨模様でしたが、村を中心として円形劇場のように畑が広がる風光明媚な景色も有名で、天気の良い日は村を囲むようにして、まるで花弁のように畑が広がる風景が見事だそうです。今回のような雨模様であっても、写真のように村に向かって畑が勾配する景色は圧巻でした。
この写真は、イランシー北部の南向き斜面という絶好区画で“イランシーの特級”との呼び声高いマズロからの1枚。1件目に訪問したドメーヌ・コリノのアニータさんに連れてきてもらったのですが、アニータさん曰く、晴れの日は絵を描きたくなるほど美しい光景よ、とのこと。
そしてこの地の特徴的な点と言えば、ピノ・ノワールを主体としながら、セザールという土着品種を10%までブレンドできる点。
所説ありますが、この葡萄品種はコルシカ島で主に栽培されるニエルチオの親戚にあたる品種だそうで、熟したカシスに菫などのフローラルなアロマと、タンニンが豊かで骨格のしっかりとした味わいが特徴的。ブルゴーニュでも北部に位置する冷涼なテロワールであるため、骨格のしっかりとしたセザールがブレンドされることで、厚みのあるスパイス感を携えた複雑味のある味わいとなります。
この出張の記念すべき1件目となった、イランシーを代表する蔵元のひとつであり、ラ・ヴィネでも長年お付き合いのあるドメーヌ・コリノでも5%ほどセザールが混植されており、その味わいはコート・ドールのピノ・ノワールとはまた違った、骨格のしっかりとした果実味・タンニンとフローラルで野性味のある味わい深いものでした。
対応してくれたのはマダム・アニータ。この出張記念すべき最初の1件目と伝えると、たくさん見ていってイランシーの魅力を日本に伝えてね、とかなり沢山のバックヴィンテージを試飲させてくれました。
イランシーでもマズロやパロットといった銘醸区画のものは、若いうちはタニックで野性味が強く、ほんのり青さの残る印象でしたが、熟成したものはそれらの要素が見事に溶け込み、ワインに見事な複雑味をもたらし、コート・ドールのグラン・ヴァンにも比肩する味わいとなる素晴らしい出来栄えでした!
カーヴも14世紀から続く歴史ある造りで、バックヴィンテージも多く、幸先の良い訪問となりました。
名残惜しくも次の訪問先へ。非常に小さな村で、コリノさんから歩いて5分のところにあるこの蔵は、今月12月に初お目見えとなった、ラ・ヴィネでも初登場となるドメーヌ・フェラーリ。
この蔵は先ほどのコリノとは対照的に、比較的新しいドメーヌであり、近年この地域でも評判を高めている蔵元。
完全手摘みや野生酵母のみでの発酵、オーク樽による熟成など、ブルゴーニュの伝統的な手法は継承しつつ、清潔で細かい温度まで管理できるステンレスタンクなど、温故知新を上手く取り入れたワイン造りで、レベルの高い、これぞイランシー!といった味わいのワインを生み出していました。
この蔵で特に印象的だったのが、写真下のセザール100%のキュヴェ。この蔵は近年の温暖化の影響もあり、イランシーでもピノ・ノワール100%で素晴らしいワインが造れると考え、1つのキュヴェ以外は全てピノ・ノワール100%で仕込んでいました。
しかしこの土地の伝統で個性の1つでもあるセザールの存在も大事であると考え、1区画だけセザールを栽培しているそうです。ソムリエでもなかなかセザール100%を飲んだことのある方は少ないのではないでしょうか。
紫色を帯びた濃い色合いで、やはりその骨格はしっかり。凝縮したアメリカンチェリーなどの厚みのある果実味に、スパイスの風味があり、ドライで緻密で力強いタンニンのある味わい。
ムールヴェードルやイタリアのネッビオーロに近いような印象がありました。
とても丁寧に細かく蔵の説明やイランシーのことを教えていただき、人生初のセザール100%のワインも試飲することができ、午前中からかなり有益な訪問となりました。
今思い返すと1点反省は、午前中にストラクチャーのしっかりした赤ワインのみの訪問であった点。わかりずらいですが、2ショットで撮った写真の歯がタンニンで真っ黒に。。
そしてこの後、午後は白の銘醸地サン・ブリとシャブリを訪問しました。その内容はまた次回!
それでは、A Bientot!